教科学習会

 2012年度最後の日は勉強ではなく、生徒や講師がそれぞれ食べ物や飲み物を持ち寄って交流会を行いました。高校生があつあつ揚げたてのベトナムの揚げ春巻きを持ってきてくれ、みんな大喜びでした。

 春巻きをほおばったりして場がなごんだところで、勉強会の感想を参加者から話してもらいました。「勉強も教えてくれるけど、名前の話しや、いろんなことが聞けるのでそれはよかった」とベトナムルーツの生徒が話してくれたことが印象に残りました。

 さて、2012年度の1年間を振り返ると、中学生の意見にもあったように、ただ勉強をする場としてだけではなく、自分のルーツについて考えたり、話しをしている場にもなっていたと思います。

 たとえば、今年の入試に無事合格したベトナム人生徒は、中学入学と同時に日本の名前に変えていました。理由は小学生の時にベトナム人ということで馬鹿にされたからと言います。そんな彼女が入試の結果報告に勉強会へ来たとき「名前どうしよっかなぁ?」と言い出しました。今までは絶対に日本の名前で行くと言っていたのが、ほんの少しではあるものの、ベトナムの名前で高校に行ってもいいかなと迷うようになっていたのです。彼女がこのような考えに至ったのも、わずかばかしとはいえ、この勉強会の成果だといえます。

 以前、彼女の兄もこの勉強会に参加していたのですが、高校入試前に、高校からは日本の名前で行った方がよいのかと講師に相談していたことがあります。ですが彼はその時にもらったアドバイスから、名前を変えずそのまま高校へ通いました。高校に通い始め、しばらくしてから、「日本の名前に変えないでよかった」と笑顔で話していたことを今でもよく覚えています。そのことを妹である彼女に伝え、高校入学までまだ日があるので、よく考えて判断してほしいとはなしました。これからも、勉強会が単に勉強する場としてだけでなく、自分のルーツについて考えることができる場にしていきたいと思います。

 参加を希望する中学生、勉強を教えていただける講師を随時募集しています。興味がある方は、トッカビまでご連絡ください。

 

 新年があけ、ある中学生が元気に学習会に参加してきました。元気なのはよいのですが、聞くと、冬休みの宿題をまだやっていないと焦っています。早く宿題を出さなくてはいけないので当然です。まわりから、なぜ宿題をしていないの?と言われながらも、なんとかこの日に終わらせようとしていました。
 今年度のオリニマダンに参加した中学生が初めて勉強会に参加しました。オリニマダンからかなり日は経っているのですが、思い出したかのように、担当の私に連絡があり、参加してきたのです。
 まだ1年生ですが、もうすぐ高校受験があることから、自分の希望校の話しをしてきました。聞くと、自分の今の学力に自信がないようで、公立高校のどこかに行ければいいと言います。
 その子は私に「自分の子どもが私学を受けたいといったらどうする?」と質問してきました。私は「努力もしないで、私学に行きたいと言えば反対するけど、やりたいことがあったり勉強をがんばりたいと言えばお金がかかるのは仕方がないけど行かせる。大体今の公立学校はクーラーも無い状態で、勉強出来る環境ではない」と答えると、その生徒は「他の中学校はクーラーがないの?」と驚いていました。彼女の学校はすぐ横に自衛隊の駐屯地があることから騒音の関係でクーラーが設置されており、それが当たり前だと思っていたようです。
 さて、話しはもどり、希望校を聞き、今からあきらめないで少しずつがんばれば学校の選択幅が広がる。その方がよいと思うので勉強会に続けておいでと誘いかけました。
 それを聞いて「今からでもいけるかな?」と不安そうなので「何が苦手なの?」と聞くと「数学が特に嫌い」と答えてきました。私は「数学は計算が得意やけど面積が苦手とか、速さと距離は得意やけど、食塩水の問題はわからないなど、内容によって得手不得手が出てくるので、すべてがわからないということでなければ、復習も少なくてすむから大丈夫」と言いました。それを聞くと少し安心したようで、確かに自分の中にも得意と不得意があり、全部が出来ない訳じゃないと明るい表情で答えていました。また、がんばってみるとも話していました。
 3学期は短く、ついこの前に冬休みの宿題テストがあったかと思えば、もう学年末テストの時期です。来週が学年末テストという時に、一人が体調を崩し欠席、一人は参加したのはよいものの、すごく咳き込んでいました。見ていてとてもしんどそうなので、「無理しないで帰った方がよいのでは」と担当が話すと、「勉強会に来たから、少しでもやって帰る。来週テストやし…」と話していました。
 その意気込みはうれしいのですが、結果、途中で帰ることになりました。体調を崩さずテストを受けることが出来たでしょうか。心配です。
 

 中学生の2学期は大忙し。夏休みが終わり、宿題テスト、体育大会、文化祭と続き、行事に追われた後に中間テストが待っています。
 夏休みの影響か、体育大会の練習がハードなのか、少し疲れた様子を見せている中学生が9月は見られました。9月15日の勉強会では、「月餅」を休憩時間に食べました。中国の月餅とベトナムの月餅があったので、二つを食べ比べました。同じ食べ物でもいろいろ違いがあり、中学生にとっても新しい発見だったようです。
 また、講師の弟がアメリカに行ったおみやげを持ってきてくれた時は、「たくさんあるので、がんばった人からおみやげを選ぶことができるようにしよう」と言うと、集中して勉強をしている姿が見られました。おみやげの力は強いようです。
 中国ルーツの1年生は、テキストや問題に書いている漢字がわからず、「なんとなく」解釈しているようです。意味を聞くとぼやけた答えを返します。もう少しわかりやすく答えてほしいとこちらが聞くとわからないとなります。わからない言葉には印を付けて、意味を書いたり、読めない漢字には読み仮名を書くように以前も教えたのですが、なかなかできないようです。この生徒は、日常会話はできているように思えるのですが、友だちとの会話もわからない事があると話していました。難しい言葉はわからないと言うことみんなにわかってもらえたらと、文化祭の発表で自分の事を文章にまとめ発表しました。
 10月には近隣中学校の先生が、中学生を連れて見学に来ました。先生はこの勉強会を知っていたのですが、生徒が勉強会の様子を見て参加するかしないかを判断させたかったと聞きました。3年生で受験生ですが、理由があって長期間学校に定着できなかったのものの、先生が話して高校進学を考えるようになったようです。見学の時はあまり話ができなかったので、次回から参加してくれるか不安だったのですが翌週から参加するようになりました。担当の講師に、自分の名前のことや高校進学についてなど話しながら勉強しています。場になじまなければ、別の部屋で勉強をしてもよいと話したのですが、みんなと一緒にすると答えてくれました。見学をしたときによい印象を持ってくれたのでしょうか。
 ある受験生は、1年生からの復習を始めました。ところが忘れている部分が多く、思うように問題を解くことができません。すごく焦っていたようなので、「今からならまだ間に合う」と話すと少し落ち着いたようです。このときは高校生が修学旅行で買ってきてくれた、おみやげを最後に食べて解散。
 おみやげが続いたので、「お菓子があって当たり前」と勘違いしている生徒もいるようです。もちろん、そんなことはないと説明はしていますが。。。

 

 8月28日から3日間、夏休みの宿題対策として勉強会を開催しました。集まってきた中学生に宿題の出来具合を聞くと、あたりまえですが各自バラバラ。聞けば納得なのですが、自由研究は何をすればよいか?や作文や詩を書くといった課題がのこっているという生徒が複数いました。また、宿題は終わっているが久しぶりにみんなの顔を見ようと他の課題を持ってきて合間に夏休みの話をしている姿が見られました。
 意外だったのは、夏休みの中学生オリニマダンに参加していた中学生が講師の大学生に誘われて参加したことです。そのうちの一人に「今日は何をするの?」と聞くと、「人権作文を書く。オリニマダンで○○が話していたことを書きたい」と答えました。中学生オリニマダンで、ある中学生が自分が体験した話をみんなの前でしました。それを聞いた参加者が、自分の考えや気持ちをそれぞれが話していきました。それがよかったので、そのことを書きたいと話していました。
 しかし、彼女にとって作文を書くのは難しいようで、ゆっくり一つ一つ思い出しながら書いていこうと書きはじめていきました。
 また、別の中学生は「来週からはじまる勉強会に来る」と話してくれていました。講師のアン君が、小腹が空くだろうとおやつを用意してくれていました。休憩時間にそれを食べながら話がふくらみ、和やかな時間も持つことができました。

 

 2012年度の学習会が5月12日より始まりました。初日には学習会を卒業した、現在大学2回生の男子が遊びに来てくれました。彼の兄は学習会の講師に来てくれているのですが、その子に会うのは4年ぶりです。
 彼は高校の特進クラスに入学し、そこから国立大学へと進学しました。高校時代に遊ぶ時間なんてなかった。本当に勉強ばかりで、今から思うと「俺の高校生活を返せ」と思うときもあるけれども、そのときのがんばりがあったからこそ、今の自分があると笑いながら話していました。この日の学習会に来ている後輩たちにも、しんどいけれどもがんばって勉強し、目標に向かって進んでほしいという先輩の気持ちを伝えていました。


 昨年から参加しているベトナムルーツの3年生は、以前よりまじめに勉強をするようになりました。話を聞くと、高校へ進学したいからだということでした。今年度の学習会が始まる前に学習会の講師と連絡を取り合い、進路について相談をしていたとのことです。

 

 ある中国ルーツの1年生は、計算は早く、正確に解くことができるのですが、テストに書かれている言葉を理解していない様子で、今回の中間テストの結果はあまりよい結果ではありませんでした。テストの間違い直しをしながら、書かれている言葉についてゆっくり聞いてみると「分かる」と返事をします。ですが、説明を求めると、答えられないことがありました。きっと何となく分かっていると本人は思っているのでしょうが、理解しきれていないのをうまく表現できないのかもしれません。

 

 1年生のベトナムルーツの子どもは、数学や英語は分かるが理科と社会が分からないと話します。彼女は日本生まれで、日本語もベトナム語も話すことができます。やはり日本語が話せるといっても、日常会話と学習言語に差があるのだとあらためて感じさせられました。 
 また、どちらかといえば勉強するというよりは、話をするのが楽しいから集っているのかなと感じる子どもが、ある時、話をしていました。声も大きくなり、話に参加する生徒の数も多くなった状態を見て、先輩の高校生が「勉強いやなんは分かるけど、どうせやらなあかん。勉強しやな後から後悔するで」と話している姿も見られました。その注意をしてくれた高校生は現在大学進学に向かっています。

 

 単位制の高校に通っている子どもは、課題を提出するからとやって来ました。分からないところがあれば遠慮しないで聞くように言うと、「教科書から探して写すだけやから…」と答えていました。その程度のことなら家でできると思われるのですが、学習会に来ると「勉強しやなって思う」と話していました。

 

 6月になると、また一人新しい子どもが参加し始めました。学校で学習会の案内チラシをもらったけれども、そのときは参加する気がなく、中間テストの点数をみて親に行くようにと言われて参加するようになったといいます。その子の親は、現在学習会に参加している別の子どもの親から話を聞き、参加させたと後に分かりました。彼は現在小学校の復習をしています。嫌がらず、与えられた課題をこなしているので、すぐに復習が終わると思います。

 

 さて、6月末になると今度は期末テストです。中間テストで思うように点数がとることができなかった子どもも多く、今回は少しでも点数アップにつながることができればと思います。
 一方、勉強会の講師も、教員採用試験や就職活動に向けてと忙しくしています。子どもも講師も、自分の進路に向かってがんばってほしいと思います。

 

 2012年度の学習会が5月12日より始まりましたが、まずは昨年度の学習会の様子を振り返ってみたいと思います。


 ベトナムルーツを持つ中学生の話です。高校進学や将来のことを話していた時に、自分の名前を現在使っている日本の名前からベトナムの名前に変えようか?と話し始めました。彼女は小学生の時にベトナム人であることで嫌なことを言われ、中学校入学と同時に日本の名前に変えていました。「どっちがいいと思う?」と聞かれたスタッフは、自分や自分のまわりの人の経験を彼女に話しました。彼女は「あ〜そうやなぁ」と、自分が考えもしなかった話に聞き入っていました。

 

 実は彼女の兄も高校受験を間近にして、同じように名前のことで悩んでいたことがありました。「自分のお兄ちゃんは入試前に名前を日本の名前にしようかな?と悩んでたんやで。」と彼女に伝えると、すごく意外だったようで、兄の話しに興味津々でした。結局、兄はベトナムの名前で高校に進学しました。高校入学後に兄に聞くと、最初は緊張したけど、今はベトナムの名前で行ってよかったも話していました。そのような兄の様子をスタッフから聞いた妹は「全然知らなかった。家ではそんなこと絶対に言わないし」と驚いていました。


 この学習会は勉強のわからないところを教えるのはもちろんですが、こういった話をすることができる場所としても機能しているのです。

 

 2002年に始まった学習会も、10年を超えることになりました。これまで、たくさんの中学生が参加しました。参加していた中学生が成長して、現在では教える側として参加してくれてもいます。もちろん、たくさんの人が学習指導にかかわってくれたので学習会を続けることができたのは言うまでもありません。しかし、ここ何年か講師不足が課題となっています。この学習会に興味があり、勉強を教えてくれるという方、ご連絡をお待ちしています。また、学習会に参加する中学生も募集しています。

 

■勉強だけでなく自分のルーツについて

  

 3月は公立高校の後期試験があります。勉強会に参加している3年生はそれに向けてがんばっています。また、1・2年生も学年最後の試験がありそれに向けてがんばっています。これまでの定期テストと違い試験範囲が広いので大変です。

 中国ルーツの子は、最近自分の名前について話すことが多くなりました。彼女は日本名で生活していますが、「私の中国の名前」と書きながら説明してくれます。その横に亜年の名前を書き「日本の名前も、中国の名前も一文字しか違いがない」と言います。またある日は、電子辞書を使って中国語の問題をスタッフに出していました。彼女が勉強会に参加して半年が経ちます。最初は少し緊張しながら勉強をしている様子でしたが、少しずついろんなことを話してくれるようになってきました。勉強をがんばってほしいのはもちろんですが、自分のルーツについて考えたり話してくれたりすることも大切なので、こういう姿がこれからも見れるような勉強会でありたいと思います。

 講師の一人が、2月にカンボジアへボランティアに行ってきました。現地の小学校に行っていろいろ教えたりすると、出発前に話していました。ぜひ、カンボジアの小学校の様子を中学生に話してもらおうと思っています。