30周年記念 韓国ソウルスタディツアー

 2004226日から29日にかけて30周年記念企画「韓国ソウルスタディツアー」を開催しました。子ども2名を含む13名が参加してくれました。

 26日1日目。午前に関西空港を飛び立ち、ちょうど正午頃に韓国仁川空港到着。チャーターバスのトラブル等もあり、遅めの昼食をとった後江華島へ。江華島は韓国で5番目に大きい島で、島中が歴史に関わっており、朝鮮に絶え間なく進入しようとする外国からの防衛に常にさらされてきた島です。とりわけ日本とのかかわりでは、日本軍の朝鮮半島侵略のきっかけとなった江華島事件が有名であり、その戦跡も残されています。

 まずは、江華島の歴史を理解するために「江華歴史館」を見学。館内は案内員もいないこぢんまりしたものでしたが、江華島の歴史を短時間で理解するには便利なものでした。その後、江華島事件とよばれる、1875年におきた日本の軍艦雲揚号との発砲事件の舞台である国防遺跡草芝鎮へ移動しました。そこには雲揚号から放たれた砲弾跡が残る松ノ木が、国防遺跡前に歴史の証言者としてそびえ立っていました。  

 仁川空港でのチャーターバスのトラブルが響き、そこでかなり予定時刻をオーバーしてしまい、江華島見学はその2カ所となりました。海風もつよく平日ということもあり、海沿いをバスで走っているともの寂しい感じがしましたが、暖かくなってくると週末は、海岸沿いに並ぶ海産物の食堂は家族連れでにぎわうそうです。

 

 27日2日目は、午前中は景福宮、西大門刑務所をまわり、午後は韓国伝統打楽器演奏グループ「ノルンマチ」の練習場を訪れました。

 景福宮は、1395年(太祖4年)に創建された李氏朝鮮の正宮で、ソウル市内にある5大王宮の中で最も規模が大きく、韓国を代表する古代の宮殿です。1592年、豊臣秀吉による壬辰倭乱(文禄・慶長の役)の戦火によって焼失。それ以降、王宮としても不吉だという理由で長い間再建されなかったのですが、1865年に再建。1868年に創建当時の規模に復元されましたが、1910年韓国併合によって国権が強奪されるや、景福宮内にあった約200殿閣のほとんどが壊され、その中の勤政殿の南側正面に朝鮮総督府庁舎を建てることによって、景福宮の景観は完全に壊されてしまったそうです。その総督府の建物は'96年の11月まで残されていました。

 前夜に雪が降ったこともあり、うっすらと雪化粧した宮殿を見学しながら、敷地内一番奥にある閔妃暗殺の現場となった場所を見学して景福宮を後にしました。

 

 その後、西大門刑務所歴史館へ移動。そこは、大韓帝国末期の1908年、日本政府により「京城監獄」として建設されました。1912年、麻浦にもう1つ刑務所ができたことで「西大門監獄」に改称。「西大門刑務所」という名称になったのは1923年です。ここは、日本の植民地統治に抵抗する人々を監禁するために使用され、最大収監数は3,200名にも及びました。

 駐車場から歴史館入口にむかって歩くと、まず最初に刑務所を囲む高い赤レンガ作りの塀が、一部当時のまま残されており、それが100mほど続くと歴史館入口が見えてきます。歴史館は地上2階、地下1階の建物ですが、刑務所跡となる敷地内には、一部獄舎、死刑場、女性だけを収監する地下獄舎等が保存さています。また、刑務所で亡くなった人たちの名前を刻んだ記念碑も建てられていました。歴史館には、投獄させられた人たちにまつわる資料や、当時の刑務所に関する資料が展示されています。さらに、当時の独房や立ったまま収監される壁館が体験できるように再現されています。壁館は2日入ると身体がマヒして死んでしまうそうです。また、地下展示室には、実物大のロウ人形で拷問の様子を再現しており、見るに堪えがたく、当時の日本の植民地統治が、数々の人権蹂躙をもたらし、日韓の歴史に深い傷を生み出していることを実感せざるをえませんでした。

 

 歴史館をでて昼食をとった後、「ノルンマチ」の練習場へ向かいました。ノルンマチは韓国伝統の打楽器を使ったサムルノリ演奏を中心としたグループです。サムルノリは、小さな鐘のケンガリ、大きな鐘のチン、2本のバチを使って両面を叩きながら演奏する太鼓のチャングと通常の太鼓の4つの楽器を使って演奏しますが、その打楽器ひとつひとつが、それぞれの意味と役割をもっていることや、演奏するときの呼吸法を教えてもらい、両手をバチに、両ひざを太鼓にみたてて、叩き方を教えてもらいました。すると、チャングを一回も叩いたことのない人が、その練習をこなしただけで、それなりに叩けるようになったのです。さすがプロが教えると違うなあということを感じました。

 

 3日目の28日は、ナヌムの家に併設されている日本軍「慰安婦」歴史館見学です。ソウル市

内から南に進みバスにゆられて約1時間、田園風景が広がるのどかな場所にあります。関西出身の在日コリアンで、現在は韓国で働きながらナヌムの家にかかわっておられる女性が歴史館の案内をしてくれました。

 ナヌムの家は、元日本軍「慰安婦」のハルモニ(おばあさん)たちが共同でくらす家です。ナヌムとは「分かち合い」という意味で、今回のツアー参加者は誰もが始めての訪問でしたが、歴史館には、韓国内はもとより日本からも

多くの見学者が毎年訪れるそうです。

 歴史館は、第1から第6までの展示場にわかれており、第1の映像、資料展示室をはじめ、日本軍「慰安婦」問題に関する資料展示がされていました。実名を公表したハルモニたちの顔の版画での展示やハルモニたち自身が作った絵画やスケッチなどが、強く心に残りました。また野外にあるモニュメントも印象的でした。  もうかくしようのない事実が、ハルモニたちの証言によって明らかにされてきているにもかかわらず、日本政府から公的謝罪も法的賠償もなされていない現実が、これらの展示を通じて被害にあわれた方々の魂の叫びであるように感じました。

 

 あっという間の3日間でしたが、参加者の皆さん一人ひとりが、それぞれに何か心に残ったツアーだったのではないかと思います。